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執筆者の写真森徳堂

カサカサがうるさい

更新日:2019年12月18日

カサカサ、クシャクシャ、パラパラ。紙がめくられ、折り畳まれる音が響く。実にうるさい。


朝の通勤電車で新聞を読む音だ。客車の中でただひとり経済新聞を読む壮年のサラリーマン。新聞を縦半分に折り畳み、熱心にページをめくっていく。


昔はあたりまえだった光景だ。その当時は何も気にならなかった音がいまは気になる。


せまい座席空間ででかい新聞を広げるのは周りに迷惑。だから縦半分に折って読む。これは通勤電車のエチケットだった。


縦半分にきれいに折り目をつけて、縦長の本を読むようにしてページをめくる。一般紙の文字数がちょうど文庫本一冊と同じぐらいと言われていたから、読書と同じイメージだ。縦長の本を読んでいると思えば何も気にする必要はない。


しかし、違う。ぜんぜん違う。スマートフォンで本もニュースも読む時代になると、縦半分に折った新聞でさえ大きすぎる。スマホに比べて、車両内で占有する空間が大きすぎるのだ。


それだけでもウザいのに、折り畳み、めくっていく紙の音はもうひとつウザい。


少し前はイヤホンから漏れる音楽やゲームの音がうるさくてはた迷惑だった。メーカーの熱心な開発で、もうそんな音は一切しない。


メール、ラインが登場して会話の代わりを務め、イヤホンの改良で音漏れがなくなり、電車の中は本当に静かになった。


残るうるささは新聞だけ。悲しくも残酷な時代の移り変わりである。


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